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最近授業で、人文学(民俗学・文学)の論文をかなり丁寧に読み込むということをしています。
具体的には、論文の構成要素を
・一次資料(primary source)
・二次資料
・著者自身の調査により直接見聞きしたこと(著者による民俗調査)
・著者の意見
に分解して、それらの関連性を書き記すというものです。

授業の趣旨的には人文学系の研究手法を理解しようということでしたが、
人文学の研究手法で社会科学とも似通っている部分を見つけたので記事にしました。
具体的には資料に着目した論文の組み立て方が似通っていました

どのように似ていたかを下に図示します。
ちなみに結構概念的な話なので、分かりにくいかもしれません…。

1.人文学の方法
人文学

人文学の場合は1次資料と2次資料の違いははっきりしています。
歴史学の場合、当時の日記や文書などが1次資料にあたり、それらを読み解いたり解説したりしたものが2次資料ということになります。
民俗学の場合、調査結果や民俗資料等が1次資料にあたり、それらを読み解いたり解説したりしたものが2次資料ということになります。

人文学の論文中では、以下の2フェイズで異なった性質の資料(テキスト)が使用されます。

  1. 先行研究等の資料を用いて大枠の学問の中にまず自分の研究領域(論文で扱う研究テーマ)を設定する
  2. いくつかの資料(1、2次資料)の中から必要な情報を切り出して、自分の論を補強する

この2つのフェイズを分かりやすくしたのが、上の図です。

2.社会科学の方法
社会科学

社会科学の場合、人文学で用いた資料にあたるのが、人や社会の様子です。
具体的には、アンケートをはじめとする調査データです。

社会科学の論文中でも、以下の2フェイズで異なった性質の資料(テキスト)が使用されます。

  1. 先行研究等の資料を用いて大枠の学問の中にまず自分の研究領域(論文で扱う研究テーマ)を設定する
  2. 調査データから必要な情報を切り出して、自分の論を展開する

2.について少し考察してみます。
本来、社会科学で扱うデータというのは社会や集団などそのものです。
しかし、それをそのまま扱うことができないので、アンケート等の手法を用いてデータ(情報)を切り出します。
つまり社会(や人間)そのものから情報の一部を切り取ってそれを元にあれやこれや議論するというのが社会科学研究を少し客観的にみたときに根幹をなす一つの考え方です。

まとめ
似ている点、というか共通点をまとめておきます。

  • 先行研究等の資料を用いて対象の学問領域に研究領域を展開する
  • 資料(人文学の場合は資料、社会科学の場合は社会そのもの)から必要な情報を切り取る

やはり、人文学と社会科学の違いは情報とその切り取り方、その後の論の展開の仕方と言うことができそうです。

※補足(2014/1/18 追記)
社会科学の場合、基本的には社会そのものを用いて論の組み立てを行います。
当然ですが、その過程で様々な資料を用いて理論を組み立てていく場合もありますので、社会科学=社会データのみを用いて論の組み立てを行うということにはなりません。

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