Pocket

最近、「情報学とはなんぞや」ということを考えています。
情報学について調べていると、どうも図書館情報学の言う「情報学」と情報学(情報学研究の第一人者である西垣通などが提唱する研究領域)による「情報学」に違いがあるような気がしています。というか違いがあります。

図書館情報学と情報学がうまくまとまるための着地点を考えてみます。

以下では分かりやすくするために、図書館情報学が定義する情報学を「情報学(図)」、情報学が定義する情報学を「情報学(情)」とします。

1.情報学 ふたつの立場
情報学(図)は以前の記事でも触れましたが、簡単に言うと「情報学(図):情報の蓄積、流通、利用に関するメディアや社会組織を対象とする研究領域」です。

一方、情報学(情)の定義は大雑把に「情報学(情):大きく分類すると (1)情報工学 (2)応用情報学 (3)社会情報学 (4)情報基礎学 から構成される学祭的学問分野」となります。

簡単のため、図示します。
情報学の構成

このように2者には大きな溝がありますが、それには歴史的背景の違いがあるようです。

2.情報学(図)の源流
図書館情報学は源流をさかのぼると、もともとは図書館学でありました。
「図書館学(1820年~)」からドキュメンテーション(1907年~)」が分裂し、
ドキュメンテーションから「情報学(図)(1955年~)」が派生しました。
それら3者が部分的にうまく混ざり合って現在の図書館情報学に統合されました。

つまり情報学(図)は「ドキュメンテーション」から派生したものです。
図書館情報学の歴史


3.情報学(情)の源流

情報学は源流をさかのぼると、その発端は

『サイバネティクス(著:ノーバート・ウィーナー)』(1948年)
→情報の役割と情報を測定し、伝達することの重要性を説く。
『コミュニケーションの数学的理論(著:クロード・シャノン)』(1948年)
→「情報:不確実性を減らすもの」(注:ウォーレン・ウィーナーの解説による)

あたりにあります。さらにそのころ、DNAの分子構造が発見(1952年)されました。
このあたりが、情報学のはじまりと言えます。

そこから、コンピューターなどによる情報技術を中核として、それらが社会における様々な問題に対しても拡張されていった、というのが情報学の立場です。
つまり、情報学(情)は情報科学(主に通信工学や制御工学)から派生したものと考えられます。

情報学の歴史


4.まとめ
実のところ英語では、情報学(図)と情報学(情)の区別はついています。

  • 情報学(図)…Information Science(Information Studies)
  • 情報学(情)…Informatics

です。
まぎらわしいので、日本のものも変えた方がいいと思います。
情報学(図)の方が歴史的に長いので、あとから来た情報学(情)が違う名前を付けるのがスジという感じがします。
しかし、これからの発展性を考えると図書館情報学は情報学(図)という名前を変えた方が良いのかもしれない、などと私自身は考えています。
また、国立情報学研究所の成立によって情報学(情)が一般的になりつつあるように感じます。

現在構築されつつある情報学(情)の枠組みに、一分野として情報学(図)が収まるのがしっくりくる気がします。

<参考文献>
・図書館情報学(編著:上田修一、倉田敬子)
図書館情報学の歴史、および情報学(図)の定義について参考にさせていただきました。

・図書館情報学用語辞典 第3版(編者:日本図書館情報学会用語辞典編集委員会)
情報学(図)の定義および歴史について参考にさせていただきました。

・情報学事典(編集:北川高嗣, 西垣通, 吉見俊哉, 須藤修, 浜田純一, 米本昌平)
情報学(情)の定義および歴史、図書館情報学の定義について参考にさせていただきました。

・情報学入門(著:篠田功)
情報学の歴史、および情報(学)の定義について参考にさせていただきました。

・A Mathematical Theory of Communication(著:Claude Elwood Shannon)
http://cm.bell-labs.com/cm/ms/what/shannonday/shannon1948.pdf」で全文を読むことができます。

Pocket